2005年 1月 八王子そごう8F美術画廊に於いて第19回新春 小倉宗衛 能面展。
小倉宗衛氏の能面・・・秘められた非凡の技
 能面の魅力のひとつは、その極めて非日常性にある。能面は、見られることによって光芒を放つ秘められた花である。ひとたび面箱から取り出され能面は、たちまちそこに非日常の空間を現出する。能面はその所持したとき、はじめて真の魅力が生動する。なぜなら氏の非凡の技は、能面の奥深く秘められているから。能面は所持され、折りにつけ眺められることによって、その秘密を限りなく語りかけてくるに相違ない。
作家 井上芳寛
万媚 manbi

万媚は小面と同類の面ですが、「百の媚に勝ると言う心なり。」と小面のことを述べた伝書に書かれています。

万媚は今まであった若い女面に濃艶さをもりこみ、新しい一つの型を示したといえましょう。ただ艶といっても、ふっくらとした肉感的のものではなく、品のよい感情を内に秘めた高貴な女性といった感じがします。

 なお毛描きの添え毛は額の中心から両側に三本出て、そのうち外側の一本が途中から他の二本のなかに入り込んでいるのが、他の女面にみられない特徴です。

百の媚に勝るとは漢詩「長恨歌」の前節に「廻眸一笑 百媚生 六宮粉黛 無顔色 (ひとみをめぐらして一笑すれば、ひゃくび生じ りっきゅうのふんたい 顔色なし)」とあり、楊貴妃の美貌と教養を百媚と称賛、その百媚に勝ると言うことでしょう。

万媚が多くの人に愛好されるのは人を引き付けて止まない魅力があるからです。

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