甘石榴の木で作った大悪尉という意味といわれていますが、この面の代表的なものの素材は桧ですから、なにか別の意味があるのでしょう。悪尉類の多くは、黄土色を基調とした彩色ですが、甘石榴悪尉は全体を白いうすい明るい朱をまぜた胡粉彩色、強さ恐ろしさを本体とする悪尉にしては華麗な面です。こうした彩色と、石榴の実のはじけたような印象をうけるところからつけられた名称であろうという説もあります。色こそ華やかですが、金具の眼球のまわりに濃い朱をそそいで強さを十分表現しています。さらに、三段の植え毛と、小鼻から顎にかけての深い皺の溝にかこまれた口は大きく開き、上下の金具の歯列の間からは深紅の舌をのぞかせて、色彩的な美しさとともに、その表現の強さはなかなかのものです。

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