翁面が、能面のうち製作年代がもっとも古く、鎌倉時代から作られていましたが、この延命冠者は室町時代になってから作られるようになりました。翁面と違い切り顎ではなく普通の男面とあまりかわらない工作です。『』(おきな)の特殊演出である『父尉延命冠者』に用いられます。明るく純朴な延命の徳を備えた若い男で父尉とは親子関係にあります。冠者とは元服加冠した男子のことですが、父子そろって延命をことおぐ内容から延命冠者と呼ばれています。鼻柱の短いまん丸な鼻と口髭・顎鬚も墨描きで黒々として、若さを象徴した相貌といってよいでしょう。眼を「へ」の字形に刳り抜き、上歯だけを見せ微笑の度が強く、受け唇の突出等、にこやかな表情はより一層福相を表しています。

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