情愛の深い表情が通り名になったものでしょう。新妻役・母親役ですから特に美人である必要はなく、人生の深さ、悲しさ、成熟した面でないと快く演じられません。夫の別れた妻・子を失った母親役など狂女物『竹雪』(たけのゆき)『隅田川』(すみだがわ)に用いられる他、化身で登場する中年女面として『朝長』(ともなが)『芭蕉』(ばしょう)『安達原』(あだちがはら)などにも使われます。小面と同様に「雪」「月」「花」の三種があり、五十前後・四十半ば・三十代と見立てられています。花深井の中で若年女面に加えても差支えない美しいものもあります。

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