この面は、鎌倉時代の武将であった荏柄平太胤長(えがらのへいだたねなが)の顔を写したものだといわれています。彼は、鎌倉幕府の重臣和田義盛が最後をとげた和田戦にからんで登場する武将です。この面は、『箙』(えびら)のほか『田村』(たむら)『屋島』(やしま)『兼平』(かねひら)の専用面として用いられます。歴戦の勇者らしく陽に焼けた顔は代赭に塗られ、凛々しい眉毛にピンとはやした口鬚、歯列も上下にしっかり並んで、いかにも中年の武士らしい感じを受けます。もっとも『箙』(えびら)では、主人公景季のことを「その様いまだ若武将の」といっていますが、史実のうえでは当年二十四、五の青年というところのようです。

inserted by FC2 system