怨霊の女面である般若の嫉妬の表現をもう一つ極端にして、とうとう動物としての蛇体化しました。制作年代から考えると、どの怨霊の女面よりも先駆けて工作されました。竜あるいは蛇の面として鬼神系の面と共に出来ました。蛇より後に作られた橋姫との中間に蛇の面を女性化して、新しく位置させたのが般若です。したがって、蛇の面の工作からは女性としての要素や性格を観ることは出来ません。しかめた眉間の皺も険しさを極め、それだけに鼻柱が上がり気味で、その中間に大きな金具の眼が光り、下顎はぐっと前に突き出ている。口は深く切り込まれ、口中には真蛇の赤い舌がのぞいて見えますので、いかにも竜や蛇を想像させます。目や歯に金具をはめたり、角に多金泥を塗っていることは般若と同じですが、額の毛描きが女性のそれでなく、頭頂から縦に力強く垂れ下がっている事も、耳を持たない事も、蛇としての性格を強調しています。

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