前シテ:喜多流 松井 彬       面:泥眼 / 宗衛 打

 朱雀院(すざくいん)に仕える臣下が葵上の病因を知るために巫女に梓の法(あずさのほう)を聞かせると、弓の音に引かれて貴婦人が現れる。さめざめと涙を流す女の名を尋ねると六条御意所(ろくじょうのみやすどころ)の怨霊と名のり、根みごとを述べる。御意所は皇太子妃として華やかな宮廷生活を送った身だったが、夫に先立たれた後、光源氏と親しくなった。ところが、近頃 源氏との仲が遠ざかり、顧みる人さえなくなった寂しさを述べ、悔しさは高まり御意所の霊は葵上の枕元に迫り、源氏の愛を奪った葵上を憎み呪いを残して姿を消す。

後シテ:喜多流 松井 彬       面:白般若 / 宗衛 打

 葵上の容体の急変に、叡山横川小聖(えいざんよこかわのこひじり)が呼ばれ祈祷(きとう)が行われる。御意所の霊は怨みの余り鬼の形相をなして現れ、小聖に激しく襲いかかります。不動明王の力を頼み祈祷を行います。迷いから救われた御意所の霊は心安らかに即身成仏(そくしんじょうぶつ)を遂げます。
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