大悪尉の悪という字は、道義的な意味の「わるい」ということだけではありません。悪源太義平とか悪七兵衛景清などの「悪」と同じように、たけだけしく強く恐ろしいことを意味します。したがって、悪尉は恐ろしげな老体と理解するのが妥当であるといわれています。悪尉は眼と眉とが接近し、鼻柱の隆起も異状に大きく、上下の唇と顎との三段に植えられた粗い植え毛にかこまれた口は、鬼神系の恐ろしさを十分に表現しています。まったく日本人ばなれのした顔つきです。形も大ぶりで両耳であって頭頂に冠型のあること、額に静脈の血筋がみえること、さらに眼と歯列に金具が用いられ、誇張的な激情の瞬間をとらえたこの面には、伎楽面、舞楽面の影響が強く表れています。

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