老女と読んで字のごとく、年老いた女の顔を現す面ですが、能では姥と違って、主として老いた小野小町を現します。かつて絶世の美女とうたわれた小野小町も百歳に近く年老い、見るにしのびない有り様となっていました。都はなれた関寺のほとりに草庵をむすんで住来の人々から恵みを受けて生きてきたという設定のもとに、能『関寺小町』(せきでらこまち)は作られています。このわびしい小町の相貌をうつしたのが老女なのです。目も普通の女面と変わりなく、頬の肉はすっかり痩せて毛描きも乱れていますが、姥の面にみられた皺がなく、しずかな相貌をみせています。小町のかつての教養や美しかった容色がまだ残されています。舞をまう『関寺小町』や『鸚鵡小町』(おうむこまち)の老女や狂乱の様をみせる『卒都婆小町』(そとばこまち)にふさわしい面といえましょう。

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