狂言面には造形的にじつにおもしろいものがあります。あらゆる生物を扱い、擬人化するのが、狂言作法の特色といえるでしょう。動植物そのものを表現したり、またその精や化身になったりと狂言面には、抽象性と具象性の両極が示されております。能『嵐山』の替間(かえあい)『猿聟』では、吉野山の聟猿夫婦が供猿たちを連れ、嵐山の舅猿もとへ聟入りするので、多くの猿面が必要となります。写実的に作られた猿面に対し、こちらは笑いを助長するユーモラスな味を出しています。

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