現在の能に使用する面ではありません。平安末期の寺院における修正会(しゅしょうえ)修二会(しゅにえ)で行われる国家安穏を祈禱(きとう)する猿楽に翁舞があり、またその法会の中には呪師芸(しゅし)としての追儺式(ついな)も演じられていました。そこでは阿吽一対の鬼神系仮面が使用されていたとされています。現在でもそうした鎌倉時代作の仮面を所蔵する古社寺が数多く存在します。その影響による阿形の赤鬼・吽形の『黒鬼が猿楽の古い家柄である観世家に所蔵されていることは大変貴重とされています。全体彩色の赤と黒に対して、先端を吊り上げなかなか力強い眉と口髭・顎鬚は反対に黒と赤にしている。眼には大きな金具を塡入(てんにゅう)していて、悪霊降伏を行う鬼神系仮面の性格をはっきりと示す。口も開閉の違いはあっても、金具が施されている。

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