非常に怪異な個性のある面です。頭の頂部に天冠を着け、上瞼が腫れぼったく盛り上り、角膜は赤く、眼孔は大きく眼の造形に特徴があり、全体に金泥の彩色で妖怪変化の相貌です。「大飛出の中の小名なり。まなこのつるゆゑなり。今春の面なり」とありますように、釣眼は吊り眼という意味で、金春をはじめ、金剛・喜多の下懸り各流が古くから使っていました。全面金泥彩色で、眼球が金具であることも、頭部に冠型があることも大飛出と変わりません。しかし、庇状をなした眉がいちじるしく左右に垂れ下がると同時に、一方では頬の筋力がつり上がって、そこにくぼみ状を作り、眼球はそのなかに陥没してしまって、その周囲を朱と郡青で彩っているところは、大飛出と違います。そのうえ、口も横に長く幅せまく開かれ、その間にはさまれる上下の歯列は櫛型になっているので、舌は見えず、耳のないことも大飛出とは違う点です。

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