源平宇治川の合戦で平家によって敗れ、平等院に辞世の一首“埋木の花咲くこともなかりしに、身のなるはては哀れなりけり”を残して七十五才で自害した源頼政の無念の表情を移した物と言われています。この面も老武者らしくうすい黄褐色で、頭髪や口髭は入道して毛を剃り落とした法体を表しています。しかし金具がはまった白眼に朱が入り、上下の歯列にも金泥を施しているところは明らかに亡霊としての怨念のほかに品位・武勇が備わっている相貎であります。使用は『頼政』のみ。修羅道の苦しさや、怨みをのんで平等院の芝に露と消えたその無念さの、憤りの相を描いたものです。

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